音楽学部音楽学科の中に「舞踊専攻」が誕生したということ

18歳はコンテンポラリー、モダンに取り組む適齢期

舞踊専攻だから「踊ることが好き」であることが基本

現代社会の中で、音楽学科舞踊専攻に期待されるもの

神戸女学院大学ならではの恵まれた環境

―― 音楽学部音楽学科の中に舞踊専攻を新設する、というのはユニークな試みですね。
島ア先生が神戸女学院大学からの教授就任要請を受けられたのは、やはりこの意欲的な試みに
共感されたからですか?

 「思いがけず、神戸女学院大学から素晴らしいお申し出をいただいて、大変光栄に思っております。スタジオの中に、ダンサーがいて、音楽が流れていれば、それで何より幸福だった振付家の僕が、あろうことか大学の教壇に立つという一大決心をするに至ったのは、音楽学科の中に舞踊専攻を設けるという、そのプロジェクトの魅力に抗しきれなかったからにほかなりません。でもこれは単にユニークなだけではない、すごく舞踊の本質をついた試みだと思いますね。日本の大学では、ここまで音楽教育と一体化した舞踊教育を試みようとした先例は、僕の知る限りではありません。海外のダンススクールでは、伝統的にかなり音楽教育を取り入れてますが、これもあくまで舞踊に必要な範囲に限られています。つまり、今回の舞踊専攻の開設は、世界的に見てもすごく思い切ったチャレンジなんですが、一方でよくよく考えてみると、踊ることは音やリズムと切り離せないわけですから、逆にこうした試みが今まで無かったことの方が、不思議といえば不思議ですよね。」

―― 神戸女学院大学という決して大きくはない女子大がやろうとしているわけですが、
そんな大きなチャレンジに取り組む神戸女学院大学への島ア先生の印象はいかがですか?

 「神戸女学院大学音楽学部の音楽教育のレベルの高さと質の良さは、私も以前から耳にしていました。関西には親しい友人や仕事仲間も大勢いますから、彼らを通して神戸女学院のキリスト教精神に根差した清新な校風についても聞き及んでいました。でもまさかこんな形で自分が関わる『舞踊』の専攻を設置していただけることになろうとは、夢にも思っていませんでした。更に実際に教えておられる先生方にお会いしてみると、みなさん、すごく自分の大学に誇りを持っておられる。特に音楽学部の先生方は、『神戸女学院大を関西一の大学にしたい』、というものすごい情熱に溢れておられるんですね。こんなすばらしい雰囲気の大学だからこそ、こんな意欲的な試みが生まれるんだと納得しましたね。この温かい環境があれば、まだまだ日本ではメジャーになりきれないアートフォームである『舞踊』であっても、革新的な試みを探求していくことも可能なんじゃないかと自信を持ちました。これは面白いコラボレーションができるのではと、今からわくわくしています。」

―― それにしても、フリーランスで活躍されてきた島ア先生が、
多くの学生を指導し、舞踊以外の仕事も多い大学教授に就任されるには、
それなりのお覚悟が必要だったと思いますが。

 「おっしゃる通り、僕はずっとフリーランスで活動してきました。おかげで多くのすばらしい出会いや仲間に恵まれましたが、その一方で常に『初めて出会った人』と『短期間』で仕事をしなければならなかったのも事実です。でも振付の仕事を突き詰めていくと、同じダンサーと長い時間をかけて、一つのものを創っていくということが重要だと感じる時期がやって来るんですよ。でも僕は自分の舞踊団を持ちたいとは思わなかったですから、そういう状況で考えたとき、大学という場所では、同じ学生達と4年間の共同作業ができるという魅力的な時間が僕に与えられることになる。振付家として、こんな素晴らしいチャンスを下さったことに、心から感謝しています。」

―― 学生達の立場からみても、島ア先生のような多彩な活動をされている方からの指導は、
大変なメリットになると思います。指導にあたっての基本方針をお聞かせください。

 「もちろん入学してくる学生のすべてが、高いレベルのダンサーということはあり得ないでしょう。だから学生達のレベルを上げるために、それこそ僕は全身全霊で取り組みます。せっかく意欲的な取り組みができる環境を大学に整えてもらうわけですから、音楽教育との全面的なコラボレーションは是非とも成功させたい。質の良い音楽学部の存在は、舞踊教育にとっては宝物みたいなものです。作曲専攻の学生の曲を、器楽専攻の学生が演奏する中、舞踊専攻の学生が自分達で振付したダンスを踊る・・・こうしたコラボレーションの相乗効果は計り知れないものがある。また僕自身にとっても、僕の振付を踊れるくらいのレベルに学生がなってもらうことで、4年間という『時間』を充実させることができるわけですね。それと舞踊専攻以外の音楽学科の学生への指導も積極的に行いたいですね。舞台パフォーマンスの基礎を教えたり、ダンスアコンパニスト(ダンスクラスの伴奏者)の勉強をする機会も提供することができると思います。その結果、音楽学部全体の教育に広がりと奥行が出てくれば、こんなにうれしいことはありません。」

―― さて、いよいよ舞踊専攻の具体的なカリキュラム内容をお聞きします。
単刀直入に、何をどのように指導されるつもりですか。

 「舞踊専攻では、コンテンポラリーダンスと、その基礎となったモダンダンスの技法をきちんと習得できる場にします。舞踊というとクラシックバレエを思い浮かべる方が多いでしょうが、大学で一からクラシックを教えるというのは無理なんですね、年齢的に。クラシックの世界で18歳というのは、もう自分の才能を証明して、プロとして仕事を始める年齢なんです。でもモダンとコンテンポラリーの場合は、18歳から始めてもプロのダンサーになることは不可能ではないと思います。もちろんそこには才能が必要ですが。だからアメリカの大学のほとんどの舞踊学科では、モダンとコンテンポラリーを教えているんです。そしてモダンダンスには、世界中で認識されたいくつかの『技法』があります。マーサ・グラハム、マース・カニングハム、ホゼ・リモンなどの先駆的舞踊家がそれぞれ独自の技法を確立させていて、それらはクラシックバレエでいうところのワガノワ・メソッドとかチェカティ・メソッドのようなベーシックな『技法』として認知されているのです。これらの選択肢の中から神戸女学院大学の舞踊専攻では、マーサ・グラハムの技法をしっかり習得してもらいたい。なぜなら、マーサ・グラハムの技法は動きが日本人の体型に合っていることに加え、一つ一つの動きの背後に哲学があり、肉体と精神の動きを高いレベルで融合することが要求されるからです。これは音楽教育と舞踊教育の一体化を目指す神戸女学院大学の意欲的な試みにとっても大変有益だと思いますね。マーサ・グラハムの技法の習得を舞踊専攻の一番の特色にするつもりです。現在、日本でこの技法をきちんと教えている所は、残念ながら非常に少ない。大学教育に限っていうと、ほとんど無いに等しいという状態です。ですから舞踊専攻の学生には、まずはピュアなマーサ・グラハムの技法をしっかり習得してもらいたい。そのために、海外からきちんと指導できる人材を招聘するつもりです。」

―― マーサ・グラハムの技法を中心に、
コンテンポラリーダンスを教えるということですが、その狙いは何ですか?

 「理由は3つあります。一つは、幼い頃からクラシックバレエを学んできた人達に、非常に質の良いコンテンポラリーを学ぶ機会を提供して、彼らが舞踊を続ける可能性を広げたいということ。クラシックは、持って生まれた肉体の資質に依存する部分が大きいアートフォームです。僕から言わせれば、日本のバレエ人口の99%以上の人は、残念ながらそういう肉体的資質を持ちあわせていない。でも、だからといって踊りをあきらめるのではなく、きちんとしたモダンとかコンテンポラリーの技法を学べば、今までやってきたクラシックをベースにして、『自分にしか出来ない舞踊表現』を追求できるんじゃないか。また、そうしたことができる場所が必要なんじゃないかと、日本の舞踊をとりまく状況を見るにつけ、そういう思いが強くなりました。これはある種の社会要請にこたえることになるわけで、大学教育の場にはふさわしい選択ではないかと思います。

 次の理由ですが、コンテンポラリーダンスとは、『あなたがあなたでありなさい』という踊りだからです。逆に言うと、『あなた』というものが無ければ踊れませんよという舞踊なわけです。ですから年齢が若いと学べない。小学生には、モダンダンスのマーサ・グラハムのテクニックは教えられないんです。なぜなら先ほども述べた通り、マーサ・グラハムの身体の動きには哲学がないといけないから。その動きの裏側に、人間性や精神性がなければいけないからです。本来、舞踊とはすべてそうなんですが、モダンやコンテンポラリーというのは、それが特により一層誇張された世界なんですよ。だから、自己アイデンティティが確立してくる18歳ぐらいから始めるのが、タイミング的にもちょうどいいんです。

 最後の理由は、世界のマーケットに通用するダンサーになるために、いまやコンテンポラリーは必須の技能だということ。ジュニアバレエコンクールの最高権威であるローザンヌ国際バレエコンクールで、クラシックとともにコンテンポラリーの技能が審査対象となっているのは象徴的です。しかも50対50の比重でね。しかし日本の舞踊教育の現場では、クラシックとコンテンポラリーははっきり分かれしまっていて、クラシックはある程度しっかりとした拠りどころとなる技法を元に教育がなされているけれども、コンテンポラリーは現代舞踊であるがゆえに、指導者の我流で行われている場合が多いんです。『私はこう教えたいわ』で指導できてしまう。その中に素晴らしいものももちろんあるんだけれど、僕の学生には、きちっとした確立された技法を正しく学んでほしいと思っています。それを習得し、その殻を飛び出して『自分の踊り』、いわゆる本当のコンテンポラリーダンスの世界に入ってもらいたい。教師としてだけでなく、一人のダンサーとして、また振付家として、僕はそう願っています。」

―― なるほど、ではダンススクールの舞踊教育と、
大学ならではの舞踊教育とは、どんなところが異なっていくのですか?

 「舞踊専攻ですから、もちろん1年生から舞踊のカリキュラムがあります。でも大学ですから、ただ踊っていればいいというわけにはいきません。カレッジスタイルだと思っていただくと理解しやすいでしょう。もちろん一般教養や外国語もありますし、音楽学部ですから舞踊音楽も含めて、基礎的な音楽教育もしっかりと行われます。その上で神戸女学院大学音楽学部ならではのトータルな舞踊教育を実現したい。そんなカリキュラム編成を考えてます。具体的な内容ですが、1・2年生ではまず『マーサ・グラハムの技法』を中心に学びます。これはたとえ4年間かかったとしても、きっちり習得してほしい。そのほかに、おそらくクラシックバレエから移行してくる学生が多いと思うので、クラシックからモダンダンス・コンテンポラリーダンスへの肉体的なトランジッションのために、『バレエ・エクステンション』というクラスも実施したいですね。これは僕がバレエダンサーに振付をしていて感じる、バレエダンサーであるがゆえに持ってしまう、モダンやコンテンポラリーを踊る際に生じる体の動きの違いによる難しさみたいなもの軽減するカリキュラムです。それから『アナライゼーション・クラス』というのも計画しています。これは本格的に踊りを学びはじめると、学生の身体にいろんな変化が起ってくるので、そういった現象を一つ一つ分析して、問題を解決していきましょうというクラス。自分の身体に起っていることは何なのかを知るということですね。3・4年生になると解剖学なども学んで、舞踊へのトータルな理解を深めてもらいます。それから忘れないでほしいのが、学生たちのために僕が創った作品を踊るクラス。もちろんこれは僕が直接しっかりと指導するつもりです。今のところの予定では、すべてのクラスをライブ音楽でやりたいので、ダンス専門のアコンパニストも海外から招聘したいと思っています。」

―― かなり多彩なカリキュラム内容ですね。ところで学外との交流では、
どんな構想を持っておられますか?

 「僕は海外での活動が長かったので、その人脈から海外の大学やダンスカンパニーとの連携プランをいくつか模索中です。例えば韓国のソウル国立大学。ここは世界のトップレベルといってもいい、質の高い舞踊教育を実施しています。そういう世界の舞踊教育のリーディング・ユニバーシティとも積極的に提携していきたい。それから、僕は最近ベルギーのカンパニーと仕事をしてるんですが、リールにある州立大学が、コンテンポラリーの優れた教育を行っているんです。こことも連携の話をすすめています。将来的には、神戸女学院大の学生が、海外留学をしやすい環境にすることができればと思っています。」

―― 舞踊専攻を志望するであろう学生のバックグラウンドは様々だと思います。
島ア先生はどんなことを学生に求められますか?

 「やはり舞踊が『大好き』で、とにかく一生懸命やる人。こういう人材に来て欲しいですね。僕は、舞踊教育で一番大事なのは『舞踊を愛する』ことを学ばせることだと思っています。舞踊が好きで好きでしょうがないという人間を作ることはできないけれども、そうなれるようにアドバイスをしてあげたり、舞踊とのきちっとした距離感を保つことを教えてあげたりすることはできる。そうした指導の積み重ねによって、本人の中から自ずと舞踊に対して自分はどういうアプローチをしていったらいいのか、自分には何が必要かという問題意識が芽生えてくるんです。そこに舞踊が大好きという気持ちが加わったら、自然と自ら学生は学ぶと思いますよ。教育っていうのはね、やはりそこまでだと思う。まずは、舞踊っていうのはこんなに素晴らしいものなんだっていうことを、舞踊専攻では教えたいし、実感してもらいたい。『舞踊を愛すること』が一番大事。踊ることが大好きな人にモダンやコンテンポラリーの基礎をしっかり身に付けてもらい、『その人に合った舞踊フォームの発見』みたいなものをサポートしていきたいですね。」

―― 島ア先生は、常々日本と海外の学生で大きく違うのは、
自分たちの作品発表の機会だとおっしゃっています。

舞踊専攻の作品発表については、どんなプランをお持ちですか?

 「まず、毎年必ず音楽学部音楽学科舞踊専攻としての公演を舞台でやります。これは音楽学部がこれまでもされていたようですが、今度は舞踊専攻も行います。他の学科の方々とコラボレーションもあるでしょうし、舞踊専攻だけでやることもあるでしょう。大学の近くに兵庫県立芸術文化センターが近々完成するということなので、そうした施設も積極的に利用していきたいですね。でも僕が今イメージしているプランは、大学の構内で、舞踊専攻の学生たちが自主的にいろんなものが発表できる環境を整えていきたいということ。例えば3ヶ月に1回でも、生徒が自作自演のものを学内の学生や先生達に見せていく、発表していくということをどんどんやっていきたい。そしてこれは僕の願いですが、卒業していった学生の何人かが集まって、独自のダンスグループを作り活躍していく・・・そんなことが実現すれば、すごくうれしい。そして常にそのバックアップを、神戸女学院大学がしている。そんな関係を築けたら理想ですね。あくまで現時点では僕の夢なんですが・・・。」

―― 神戸女学院大学のキャンパスが
そのまま「舞台」になるということですね。

 「そうそう。純粋に踊る環境としては、決してベストではないかもしれない。でも神戸女学院大学のキャンパスは素晴らしいですよ。岡田山という山の上にあるんですが、構内には広いスペースがあって、ヴォーリズの建築や古いチャペルなど、まるで本物の舞台装置みたいなロケーションがたくさんあるんです。これだけの舞台がありながら、どんどん作品発表しない手はないですよ。それにこの大きすぎない大学のサイズや、雰囲気のすばらしさは、舞踊教育や音楽教育にはかけがえのないものだと思います。」

―― 神戸女学院大学のすばらしい環境は、地元神戸の街のあり方と切り離しては考えられません。
ジャズや映画を長く育んできたという伝統もある神戸の街を、島ア先生はどうご覧になりますか。

 「僕が、神戸女学院大学で教えることを決心した背景には、『神戸』という街が持っている可能性に惹かれたということもあるんです。それほど僕には神戸が魅力的だった。これはとても大きな夢になりますが、『神戸から舞踊を発信する』というプロジェクトができるんじゃないかと思っているんです。東京は、確かに有名な一流のバレエ団や舞踊団が来る街でしょう。でも海外には、それぞれの国や地域では非常に有名で、質の高いパフォーマンスを披露しているが、なかなか海外公演ができない小規模なダンスカンパニーがたくさんあるんです。そういう小さなグループをいくつか神戸に呼んで、一週間ぐらい、神戸周辺の様々な劇場で順番に公演を行うみたいな、そんなイベントが神戸なら実現可能のような気がするんですよ。そしてこのプロジェクトを神戸の市民がサポートし、その中心となる存在が神戸女学院大学であるというような、そういう大きな夢を見られるんじゃないかってワクワクしています。神戸は港町で昔からインターナショナルだし、そういうイベントをやるには、日本の中でも一番向いている街だと思いますよ。大学でも最近は産学連携、地域連携、社会連携などが話題に上っていますが、文化を主体にした連携はまだまだ少ない。ビジネスや産業技術ではなく、もっと精神的なつながりを重視した産学連携や社会連携、地域連携を進めていけば、豊かな社会が生まれると思います。大学が社会貢献できる大きな可能性がそこにあるわけで、もしも神戸の舞踊プロジェクトが実現すれば、素晴らしいモデルケースになるのではないでしょうか。」

―― 世の中が急速に変わろうとしています。
大きく価値観が転換するただ中で、音楽学科舞踊専攻で学んだ学生、
また彼らがそこで習得するであろう舞踊には、どんな役割が期待されると思いますか?

 「卒業後の進路について考えると、入学時にはほとんどの学生がプロのダンサーになりたいと思っているはずです。最初から振付家や教師になりたいと思っている学生は稀でしょう。でも、プロの職業ダンサーになれるかどうかは、正直いって分からない。これだけ習得したらプロのダンサーになれますよ、というようなものは無いですから。才能やチャンスに恵まれるかどうかは、やはり本人次第です。だけど、踊りの世界はダンサーだけで成り立っているわけではない。そこには振付家も必要でしょうし、教師も必要でしょう。レペティートという職種もある。すべてのものを将来の可能性と捉えるならば、世界で認識されている技法、つまりマーサ・グラハムの技法を習得しているということは、間違いなく学生達の大きな支えになってくれます。それを習得しただけではだめですが、それを使って自分のクリエイティビティを発揮して生きていく能力があれば、それは非常に有利になると思う。つまり、舞踊の世界で生きてく可能性が広がる、ということです。

 また世界に通用するものを身に付けているということは、自分の自信になりますよね。それが何より大事だと思う。その自信をもとに、学生達がその先の新たな道を切り拓いていけるようにサポートしてあげたいと思っています。また一方で、こういう変化の激しい時代の中で、たまたま『肉体』を使う舞踊家に関わる仕事をしている僕の視点から現代社会の歪んだ部分を見ると、『現代人は、自分の身体に訴えることをしなくなったんだなあ』とつくづく思うんですよ。肉体を使ってなにかをするということが、非常に少なくなった。『心技体のバランス』とはいいますが、現代のライフスタイルの中でこれは著しく崩れているように僕には見えますね。これからは『身体に訴えることの中に、真実を追い求めていく』ことをしなければならない。そうでないと、精神の安定や健全性というものは生まれないと思う。そうなると『身体』ということを、より全体的に理解していく必要がでてくる。身体、つまり肉体が生きているということは、常にリズムを刻み続けているということです。極言すれば、音楽を内包した存在だと言っていい。そういう意味において『舞踊』というのは、これからの時代、精神の安定と健全性を保つための良薬になると思うんです。なかんずく音楽というものを深く理解した踊りはね。だから『舞踊』をめざすにしても、これからはいろんなめざし方があるだろうと思いますね。ただ残念なことに、舞踊というのはまだまだ社会との連携は密接ではないわけです。だからこそ、今『大学』という場で、音楽と密接な関わりを持つ舞踊を学ぶ意味は大きい。神戸女学院大学では、そうしたより大きなビジョンで、音楽教育と舞踊教育を追求していくことになるでしょう。音楽学部音楽学科舞踊専攻のこれからを、どうぞ期待してください。」