70周年記念誌
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研究に打ち込む中で、言い出せなかった妊娠。060大学院で博士号を取得し、その後は女学院で博士研究員に。と同時に、大学院生の時に結婚、研究員としてのキャリア2年目に妊娠と出産も経験しているんです。望んでいた妊娠とはいえ、周りに迷惑をかけるのではないかと思い、当時はとても言い出せませんでしたね……。幸か不幸か、学会の司会役や小講演の機会など光栄な依頼をいただいたりもして、周囲に妊娠を伝えないままこなしていました。若かったので体力的には大丈夫でしたが、妊娠中も出産後もとにかくドタバタ。当時は夫が東京に単身赴任していましたし、「自分が好きな研究をしているせいで子どもに迷惑がかかっているのでは」と不安になることもありました。そうした矢先、日本学術振興会の「特別研究員(RPD)制度」が新設されました。出産・育児で研究を中断した研究者の現場復帰をサポートする新制度で、これはチャンスと出産直後に慌てて申請。無事採用され、翌年4月から2年間、奨励金と研究費を受給しながら日本大学で研究を続けることができました。子どもを育てながらも研究に没頭できる、恵まれたチャンスを掴むことができました。かわさき やよい2004年、神戸女学院大学から博士(人間科学)の学位を取得。認知心理学の観点から「虚記憶(フォールスメモリ)」を研究し、国際誌「Memory」や「Psychologia」に論文が掲載されるほか、最近では科学雑誌『Newton』(2018/3/26発売)の記憶特集記事を監修。2人の息子を育てながら、日本の虚記憶研究の第一線で活躍している。  

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