70周年記念誌
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091「学ぶ」ことは自分でルールを見つけ出すこと。英語教員として、43年間。その扉を最初に開けてくださったのは、女学院の中高部で出会ったアンジー・クルー先生でした。ほぼ100年にわたって女学院に受け継がれてきた“日本語を使わず、英語で英語を教えるメソッド”を確立されたのが、クルー先生。戦前から在籍されていて、戦後も約1年生のときがクルー先生在籍最後の1年。1年だけでしたが、直接学ぶことができたのです。私が高校を卒業した頃の日本は学生運動の真っ只中。大学が何かと騒々しい時代でしたが、進学を決めた女学院には今と変わらない静けさが満ちていて、大好きな小説や詩に親しむ日々を過ごしました。文学は「本の中だけの世界を学ぶ」学問だと思われがちですが、実は違います。本の中のことを学ぶには、歴史、宗教、社会、経済、人の心理、自然科学など、実社会を知ることが欠かせません。詩の一節が聖書の言葉の隠喩だったり、小説の表現に当時の社会が読み取れたり。文学を通して得たたくさんの教養は、初対面の外国人との共通の話題になるなど、卒業後の思わぬシーンでも役立ちました。大好きだった文学は、私の人生を豊かにしてくれる学びになったのです。20年もの間、岡田山で教鞭をとられていました。私が中学  

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