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2023年度コンサート記録

2023年7月1日
子どものための七夕コンサート 〜お空のうえのおはなし〜

  「子どものための七夕コンサート〜お空の上のおはなし〜」(「子どものためのコンサート・シリーズ」第64回)を7月1日(土)、本学講堂にて開催しました(第1部11時開演、第2部14時開演、各60分、来場者数・第1部404名/第2部190名、計594名)。

 出演は「音楽によるアウトリーチ」履修生を中心とした、芦沢梨里沙(フルート)、金悠雅(ピアノ)、冨田萌絵(ピアノ)、山田詩織(ピアノ)、片山比遊(声楽)の計5名です。
今回のコンサートは七夕にちなんだオリジナルストーリーに合わせて選曲し、はじめてプロの照明を入れ、講堂の天井に星空を映し出すなどの演出にもこだわったことで、七夕らしさが溢れるコンサートになりました。

 出演者の挨拶の後、まずは下総皖一作曲〈たなばたさま〉をピアノ演奏に合わせてお客様と一緒に歌うところからスタート。主人公である男の子が短冊に願い事を書くところから物語は始まります。短冊に書いた願いが叶いますように、という思いを込めて、ハーライン作曲、映画《ピノキオ》より〈星に願いを〉をフルートとピアノで演奏しました。
 その後、エステン作曲〈人形の夢と目覚め〉のピアノ演奏で男の子が眠りについたことを表現しました。男の子が目を覚まし、お空の上を散歩していると彦星に出会います。男の子が彦星に挨拶する様子を、エルガー作曲〈愛の挨拶〉のフルートとピアノ演奏で表しました。
 彦星は男の子に、一緒に織姫に会いに行かないかと提案し、二人がリスト作曲〈ハンガリー狂詩曲 第2番より〉のピアノ演奏にのせて仲良く歩き始めると、急に雨が降り、雷まで鳴り始めました。この雷は照明による演出で表現しました。そして二人が悪天候の中で焦っている様子を、ショパン作曲〈ワルツ イ短調 遺作〉のピアノ演奏で表しました。
 男の子と彦星、そして織姫のためにも雨が上がることを願って、中川ひろたか作曲〈にじ〉を歌、フルート、ピアノで演奏しました。客席にいる多くの方が一緒に歌ってくださり、一体感を感じることができてとても嬉しかったです。
 雨が止み、いつの間にか空には沢山の星がきらめき、天の川が現れました。モーツァルト作曲〈きらきら星変奏曲〉のピアノ演奏で美しい天の川を表現しました。

 ほっとしたのも束の間、そこに突然蜂が現れ、男の子と彦星を襲います。コルサコフ作曲〈熊蜂の飛行〉のフルートとピアノの演奏で、この蜂の群れを表現しました。蜂が襲い掛かってくる臨場感を表すため、演奏前のセリフが終わると同時に息を合わせて突然演奏に入る、という演出を考えました。
 そして、彦星が蜂と戦っている様子を、ネッケ作曲〈クシコス・ポスト〉のピアノ6手連弾で表しました。この曲では、演奏者の3人が押し合いをしたり、声を出したりするなどのパフォーマンスを加えることで、お客様に楽しんでいただける工夫をしました。
 無事に蜂を追い払うことができた男の子と彦星は、シュトラウス1世作曲〈ラデツキー行進曲〉のピアノ連弾に合わせて天の川を渡り、織姫との再会を果たします。

 ここで「リズムに合わせて織姫と彦星の再会を祝おう!」と題して、客席の皆さんとアメリカ民謡〈幸せなら手をたたこう〉の音楽に合わせてリズム打ちをするというアクティビティを行いました。
 サンバやブルースなど、さまざまなリズムに合わせて手を叩きました。中には難しいリズムもあったため、何度か練習を行いました。練習を重ねるうちにリズムが揃い、最後には会場全体で一体感を感じることができました。来場時に配布した折り紙で作った星の飾りを手につけ、楽しそうに参加してくれている子どもたちの様子が印象的でした。
 織姫と彦星の再会をお祝いしたところでお話は締めくくり、今回のコンサートで登場したフルートとピアノの楽器紹介を行いました。楽器について会場に問いかけをした際には、客席から大きな声で反応があり、積極的に参加してくださっている様子が舞台の上にいる私たちにも伝わってきました。

  その後、改めてみんなの願いが叶いますようにとハーライン作曲、映画《ピノキオ》より〈星に願いを〉を、客席の皆様と共に歌いました。そして最後に、出演者全員で中川圭三作曲〈ぼよよん行進曲〉をピアノの演奏に合わせて歌い踊りました。思いの外、お客様も一緒に踊ってくださり、会場全体で楽しむことができました。
 今回のコンサートは、音楽はさまざまな情景や、喜怒哀楽を表現できること、また、リズムや曲調が変化することで、同じメロディがまるで違うものになると体感してもらうことを目的として行いました。楽器の種類が少なく、悩むことも多々ありましたが、その中でも楽しんでいただけるよう工夫しました。
 終演後にはフルート、オルガン、ピアノ、ドレミパイプ、打楽器の楽器体験コーナーを設け、たくさんの子どもたちに参加してもらうことができました。
 今回のコンサートを通して多くの学びや気づきを得ることができたので、是非これからの活動に活かしていきたいです。

(芦沢梨里沙・記)


2023年10月14日
子どものためのスペシャル・コンサート〜オト ノ トビラ〜

  2023年10月14日(土)、分厚い雲に覆われた灰色の空を突き破るような、パワフルなピアノとクラリネットの音色が講堂中に響き渡った「子どものためのスペシャル・コンサート 〜 オト ノ トビラ〜」(14時開演 公演時間60分、来場者数・子ども108名、大人178名 計286名)。

1台4手連弾というプレイスタイルを持つピアノデュオ「レ・フレール」として活躍する傍ら、ライフワークとして病院や福祉施設への訪問演奏や、バリアフリーコンサートをプロデュースする斎藤守也さん(ピアノ)をゲストに迎え、アウトリーチ・センター長である稲本渡先生(クラリネット)との共演で行われた本公演の模様をお届けする。

暗くなった会場に突如鳴り響くクラリネットの音色。会場後方から登場した稲本先生による〈情熱大陸〉(葉加瀬 太郎)で、コンサートが煌びやかにスタートした。(ピアノ高橋優佳、アウトリーチ履修21期生)
「私の兄が作曲し、私自身もレコーディングに参加しました」という曲紹介に続いて演奏したのは、NHK大河ドラマ『どうする家康』のメインテーマ〈暁の空〉(稲本 響)。吹き抜ける風を感じさせるクラリネットの爽やかな音色と躍動感のあるピアノは、まるで大自然の中を疾走しているかのように錯覚させた。
そして、稲本先生ソロパート最後の曲〈リゴレット・ファンタジー〉(L.バッシ)では、畳み掛けるような超絶技巧や、次々と移り変わっていく旋律とクラリネットのさまざまな音色に、8分半を超える大曲にも関わらず、会場中がしんと静まり集中している様子が印象的だった。

続いて、稲本先生からの紹介を受けて斎藤さんが登場し、そのままピアノに向かい1曲目〈FLOW〉(斎藤 守也)を演奏。曲名の通り、繊細かつ壮大に渦を巻いて流れ出るような澄んだピアノの音色に、まるで夢の中を漂っているような心地がした。
自己紹介後の2曲目は、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』より〈彼こそが海賊〉(K.バデルト、G.ザネリ&H.ジマー)。1曲目と打って変わって、わくわくするような低音部の始まりに、ぐっと客席が惹き込まれるのが分かった。まるでオーケストラの演奏を聴いているかのようにダイナミックに奏でられるテーマと、中盤の繊細に美しく演奏されるメロディとの対比が、より一層この音楽の壮大さを際立てていた。
拍手が鳴りやむのを待たず、3曲目アニメ『ルパン三世』より〈ルパン三世のテーマ〉(大野 雄二)に突入。前の曲の拍手がそのまま手拍子へと自然に移行したのが、とても印象的だった。斎藤さんのピアノに合わせて客席の手拍子の強弱が変化していく一体感は、見ていて興味深く、昨年度の授業内で斎藤さんが話していた「音楽を通したコミュニケーション」を実際に肌で感じることができた。

4曲目は、斎藤さんがプロデュースするバリアフリーコンサート「小さき花の音楽会」のテーマ曲〈LITTLE LIFE 〜小さき花の詩(うた)〜〉(斎藤 守也)。
このコンサートを始めるきっかけは、生後すぐにNICU(新生児集中治療室)に入った斎藤さんのご子息。それ以来、斎藤さんは病院や福祉施設への訪問演奏を中心に活動していたが、活動を続けるうちに「病気や障がいがあるとコンサートに行けないと諦めていたり、動き回って迷惑がかかってしまうと思っていたりする方が多いことに気づいた。でも、僕らがもう少し寄り添えたらコンサートに参加できる子どもたちがいっぱいいると思った」ことから、コンサートのプロデュースを始めたそう。来場者には「動いていいよ」「会場の出入りは自由だよ」と声掛けをしているそうだ。
「病気や障がいと闘う子どもたちと、道端に力強く咲く小さな花の姿を重ねて、小さき花の詩(うた)と名付けました。またLITTLE LIFEには、小さな命、という意味は勿論、些細な日常、誰の目に触れることもない、評価されることもないけれどすごく大事なもの…そんな意味も込めました。祈りの気持ちを込めて作った曲です。今日も祈りと感謝の気持ちを込めて演奏します。」
そんな曲紹介に続いて演奏されたこの曲は、澄んだピアノの柔らかく繊細な音色で講堂を包み込んだ。この曲について、アンケートでも「思いやりのある温かい優しさに触れることができた。」「とても気持ちが慰められた。自分の子どもも病気など、生きているといろいろあるが、本当に気持ちが救われた。」などという声が聞かれた。

続いて演奏されたのはディズニー楽曲のメドレーである〈クラブ・イクスピアリ〉(レ・フレール 編曲)。次々と登場する耳馴染みのあるメロディに、親子で楽しそうに言葉を交わしている様子が印象的だった。

そして斎藤さんに呼ばれ、稲本先生が再び舞台に登場。いよいよ共演パートの始まりだ。 共演パート1曲目は、先程に引き続きディズニーの楽曲である〈ディズニーランドR・メドレー〉(斎藤守也 編曲)。曲始まりの〈メインストリート・エレクトリカルパレード〉のテーマがクラリネットで演奏されると、本当にディズニーランドに来たかのようなワクワク感があり、〈クラブ・イクスピアリ〉と同様に講堂は大きな手拍子に包まれた。

そこから、斎藤さんのオリジナル曲である〈グローリー・モーメント〉〈宝探し〉を2曲続けて演奏。〈グローリー・モーメント〉(斎藤 守也)は、タイトル通りの輝かしいクラリネットのメロディと、そのメロディを一層輝かせるように演奏されるピアノが合わさって、会場の集中度がグッと上がった。〈宝探し〉(斎藤 守也)は、おそらく客席の殆どが知らない曲だっただろうが、自然に手拍子が沸き起こり、小さな男の子が思わず立って踊り出した様子を見て、斎藤さんの持つ音楽・リズムが聴き手に与える影響力を改めて感じさせられた。

そして、本公演最後の曲は、伸びやかなクラリネットのメロディと、力強く華やかなピアノで演奏される〈エンドロール〉(斎藤 守也)。
演奏が終わると会場は大きな拍手に包まれ、自然と会場からはアンコールを求める拍手へ。

アンコールでは、〈LITTLE LIFE 〜小さき花の詩(うた)〜〉(斎藤 守也)と、〈On y va !〉(斎藤 守也)をクラリネットとの共演で演奏。
先にピアノソロで演奏された〈LITTLE LIFE 〜小さき花の詩(うた)〜〉も、クラリネットの木管楽器ならではの柔らかな音色が加わることで、この曲の持つ優しさ、温かさといった面がより引き出されていた。
そして、最終曲の〈On y va !〉では、この日1番の会場中が一体となった大きな手拍子から、客席の、今目の前で展開されている音楽への高揚感と熱量を肌で感じ、音楽には人の心を開く力があるのだということを改めて実感させられた公演だった。

(櫻本麻衣・記)


2023年12月9日
子どものためのクリスマス・コンサート 〜Boneボヤージュとクリスマスの旅〜

   「子どものためのクリスマス・コンサート?Boneボヤージュとクリスマスの旅?トロンボーンって知ってる?」(子どものためのコンサート・シリーズ第66回)を、12月9日(土)に本学講堂で開催しました。 (第1部11時開演、第2部15時半開演、各60分、来場者数・第1部509名/第2部280名、計789名)。

 出演は鶴房采花(アウトリーチ履修11期生/トロンボーン)、吉田梨絵(同11期生/編曲、トロンボーン)、松尾璃奈(編曲・ピアノ)、別所香穂(声楽)、田上優希(同21期生/トロンボーン)、龍咲良(本学3年生/トロンボーン)、北野純怜(本学2年生/トロンボーン)の、卒業生と現役の学生という多岐に渡る7名のメンバーで結成しました。
 トロンボーンを主役にした演奏会を開催したいと思い今回のコンサートを企画しました。子どもたちにトロンボーンの構造、歴史、役割、音色を知ってもらい、学部生と共にアンサンブルを通して音楽的な交流ができるのもよい経験でした。
 私は卒業後、吉田梨絵さんと松尾璃奈さんと同アウトリーチ履修生11期生の藤井美波さん(旧姓)と4人でアウトリーチ活動やパーティーでの演奏など様々な演奏の場に出演しました。2014年度の「子どものためスペシャル・コンサート」では、トロンボーンをテーマに公演を行いました。演奏活動をしていく中で、吉田さんと松尾さんの編曲の素晴らしさを多くのお客様に伝えて参りました。
 吉田さんはミュージック・クリエィション専攻ですがトロンボーンも演奏するため、トロンボーンの良さを生かした選曲と編曲が特徴的です。松尾さんはその場の雰囲気で、ピアノのアレンジを加えて演奏します。今回の公演では、吉田さんが新たに「ありがとうの花」、「そりすべり」を、松尾さんは「世界中で一番素敵なお誕生日」を編曲しました。また今回は、声楽の別所香穂さんが歌のお姉さんとしてナレーションと歌を担当しました。
 歌のお姉さんを中心に据えて、奏者も歌のお姉さんからの質問に答えるという形式でMCを構成しました。出演者が7人編成だったので、ストーリー仕立てにしてしまうと、子どもたちが登場人物を覚えることが難しいだろうと思いこのような構成にしましたが、終演後「お姉さんのお名前を全員覚えたよ!」というお声を何人かのお客様からいただいたことが嬉しかったです。歌のお姉さんが、各奏者の名前を入れて質問をしていたからだと思います。

 アクティビティでは、「ありがとうの花」に手話を入れて会場全体で楽しみました。この曲は元々NHKの子供番組『お母さんといっしょ』の中で手話を用いて歌っています。この曲を選曲した理由は、3歳児の我が子です。我が子は、あまり上手くお話をする事ができません。ですが、言葉が話せなくても、自然に手振りで合図をして自分の思いを表現してくれるようになりました。そんな我が子の姿を見て、自分の思いを言葉だけでなく、身体で表現して伝える事は大切だと気付き、この曲を入れたいと考えました。手話の知識がなくても、楽しみながら歌にのせて表現することが手話の醍醐味だと思います。

 そして、ワークショップの【スライドホイッスルを作ろう】には特に力を入れました。以前のスペシャル・コンサートで実施し好評だったのですが、角度によって鳴りにくいのが難点でした。我が子と一緒に試行錯誤をし、息を吹くことができれば簡単に鳴らせるよう、色んな場所に補強を加えておくなどの工夫と改良をしたことで、参加された方々にはとても喜んでもらえました。「もう1つ作りたい!」や「兄弟も誘ってきてもいい?」というお声が嬉しかったです。このワークショップは私たちメンバーが一緒になって実施しました。一緒に工作を体験したことで、より子どもたちにとってよい思い出になっていればいいなと思います。

 出演者7名という大所帯ならではの苦労もありましたが、それぞれの特色を活かした意欲的な挑戦は、やり切った清々しさがあります。あらためて、挑戦の機会をいただいた母校には感謝の気持ちでいっぱいです。卒業生と在学生の練習日程を「合わせる」、価値観を「合わせる」、合わせるというのは確かに大切な要素かもしれません。しかし多くの演者との共演では、いかに「折り合い」をつけるかが大切であると学びました。
 この度は、素晴らしい経験をさせていただき誠にありがとうございました。今後も子どもたちと一緒に、トロンボーンの面白い音色や温かい音色を探していきたいと思います。

(鶴房采花・記)


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