「訪問客」
【M.E.】
僕の家は6人家族だ。2匹の犬と2匹の猫もいる。いっぱいいるでしょ? すごいでしょ?
ビーグル犬のビクは、正月に訪れたペットショップで保健所へ連れていかれるところを、小学生のお姉ちゃんのお年玉で飼った。名前の由来は、背中にBLのような模様が入っていて、当時小学生のお姉ちゃんは、“L”を“く”だと言い張り、ビクって名前が付いたんだ。
プードル犬のココは、近所のペットショップで繁殖犬としての役割を終えたので貰ってくれという言葉でお父さんが貰ってきた。
猫たちは、友人の家で野良猫が子どもを産んで、貰い手がないというから、お姉ちゃんが持って帰ってきた。にゃーって泣くから一匹はにゃじ。もう一匹は黒いから、くー。
動物園みたいな我が家。我が家は、いつも何かしら生き物に囲まれている。
僕が生まれる前には、シーズー犬のふくちゃんがいたそう。ふくちゃんは、3歳になるお姉ちゃんが大好きで、お姉ちゃんの後をいつも着いてまわっていたんだ。ある日、お姉ちゃんが三輪車で散歩に出ていった後を、ふくちゃんも着いて行って、車に轢かれちゃったんだって。
もう一匹は、ポメラニアン犬のいなり。わんわん牧場で保健所行のみすぼらしい犬がいて、お姉ちゃんが、泣いて持って帰るっていうから、持って帰ってきたんだって。いなりも、お姉ちゃんが大好きで、良く一緒に遊んでいたって。ただ、ある時を境に、いなりは帰ってこなくなったんだ。お姉ちゃんが、小学校へ行くのについて行って、迷子で衰弱したって近所のおばちゃんが言っていた。
僕が生まれてきてからも、お姉ちゃんは生き物が大好きで、中学校に捨てられた猫を拾って我が家に持って帰っては、名前を付ける。こいつは、みー。みーもいつのまにか野良猫になって、どこかへいってしまった。あれから10年もたっているのに、お姉ちゃんは時々、野良猫を見ては「みーかなー?」って呼んでいる。
そうだなー、お姉ちゃんが大学生の時は、ポメラニアン犬が道を歩いていて、危ないと思ったお姉ちゃんは家に持って帰ってきた。勝手にポメなんて名前つけてさ。ポメを家族のもとへ返すべく、村内放送をかけてもらって、やっと家に帰ることが出来たんだっけなあ。
ほんと、お姉ちゃんにはあきれるよ。なんでも持って帰ってくる。しかも、持って帰ってきた生き物たちが、いつの間にかお姉ちゃんのもとを離れている。
たしか、お父さんもそうだっけなあ。
お父さんが中学生の頃、校長先生から伝書鳩貰ったんだって。
友達に手紙を書いて、さあ、行ってこい!なんて外に放したらそのまま飛び立ったって。
ああ、小鳥も飼っていたそうだよ。伝書鳩で学習したお父さんは、小鳥を鳥籠の中で育てていたんだ。ある日、鳥籠を除くと、小鳥がいない。その代わりにとぐろを巻いた蛇が。おなか一杯になって出られなくなったんだって。
あとはねー、あ! あひるだ、あひる! お父さんが高校生になった時、あひるをもらってきたんだ。2泊3日の旅行に行くから、たらいの中に入れていたら、帰ってきたときには、ぺたーんて水の中で死んでいたんだって。お父さん曰く、あひるは溺れて亡くなるんだって。(笑)
もう、ここまでもらってくると、血筋だとしか言えないよね。飼い主としてこれは良いのかな?お父さんも、お姉ちゃんも、拾った子たちは自分が見ていない間に遠い所へ行っちゃって。
でもね、話を聞いているだけでも、どこか幸せそうなんだ。とっても。ひと時だけ過ごして、笑ってどこかへ行って。今、家にいる子たちも家に来たころとは見違えて、走り回っているしね。ふふ、次はどちらさまが家に連れてこられるのかな。
いらっしゃい、ひと時だけの招かれたものたち。