音楽によるアウトリーチ 神戸女学院大学音楽学部
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アウトリーチ関連講演会およびワークショップ 2005年度

アウトリーチ関連講演会およびワークショップ

「音楽によるアウトリーチ」では、地域での音楽活動をより豊かに展開するために、多面的な学びをめざして関連の講演会やワークショップを行っています。国の内外で活躍している演奏家や、各分野の専門家を招いての講演会およびワークショップについて報告します。

講演会シリーズ

第1回 井原三保氏「ニューイングランド音楽院のアウトリーチ活動」

10月14日(金)、この8月末まで文化庁派遣によりボストンのニューイングランド音楽院で1年間アートマネジメントの研修をして帰国されたばかりの井原三保氏をお招きして、アメリカの音楽大学での取組についてお話を伺いました(音楽館ホール)。

同音楽院のキャリア・サービス課は、音楽学生に向けて、音楽活動の際に必要な広報資料、プロフィール、履歴書、助成金申請書作成などの指導をしています。またパフォーミング・アウトリーチ・オフィスは年間200回以上の小学校やシニア・センター、病院への訪問演奏のとりまとめと指導を行なっています。学生の活動方法や可能性は多岐にわたっており、いずれも専門スタッフによる丁寧な指導がなされています。様々なプログラム内容、実際にアウトリーチ活動をしている弦楽四重奏団の様子、プレスキット(自己宣伝用資料)の実例など、興味深いお話を聞くことができました。


第2回 仲道郁代氏「私の音楽活動を支えるもの」

11月16日(水)、ソリストとして国内外で活躍する傍ら、子どものためのプロジェクトやクラシック音楽になじみのない大人のためのコンサートを活発に展開していらっしゃるピアニストの仲道郁代氏をお招きして、音楽で何が大切か、何ができるのかについてお話を伺いました(音楽館ホール)。

音楽で大切なのはイメージを豊かに持つこと、イメージを一杯のせて伝えること、音から感じること、想像すること。ドビュッシーの《月の光》、ベートーヴェンの《ワルトシュタイン》、田中カレンの《星の動物たち》などを例に、音が広げるイメージの世界を生き生きと多彩に繰り広げて、音楽の力と可能性を実感させて下さいました。心をほぐすには、体をほぐすことからとみんなで体操したり、ダランと脱力したり、楽しい一時もありました。音楽は人間の3つの欲求「向上する喜び」「表現する喜び」「自己実現する喜び」を叶えてくれるもので、これをできるのは幸せなことというお話も心に残りました。 

参加者からは「『好きにイメージしていいのよ』という言葉でとても楽になりました」「仲道さんは音楽を通して多くの人が楽しく幸せに生きられるように、日々、土木工事をされているように感じました。いつもナチュラルな感性を忘れずに音楽と関わりながら生きていたいと思いました」といった声が寄せられました。



第3回 田村朋子・信子氏「リトミックの理論と実践」

1月17日(火)、田村朋子氏(ダルクローズ・サーティフィケイト取得、本学英文学科非常勤講師)と田村信子氏(全日本リトミック音楽教育研究会大阪支部支部長)の二人をお招きして、リトミックの理論と実践についてご指導頂きました(音楽館ホール)。

「リトミック」はスイスの作曲家エミール・ジャック=ダルクローズによって考案されたユニークな音楽教育法で、身体の活動を通して内的な音感を養うことを目指したものです。

リトミックには5つのアクティビティ(フォロー、即時反応、置換ゲーム、完全カノン、プラスティックアニメ)があり、今回はその中から、拍子に合わせて歩いたり手拍子やボールをまわしたりなど音楽を追いかける運動(フォロー)、音楽や言葉による合図に従う運動(即時反応)、最後に歌とリズムを組み合わせたアクティビティを体験しました。受講者は慣れない運動に戸惑いながらも楽しそうに動いていました。

学生からは「以前からリトミックに興味があった」「難しいかと思っていたが親しみやすかった」「音そのものを身体と動きで表すのがおもしろい」「将来子どもに音楽を教える時に活用したい」などの声が聞かれました。活発に質問が出た他、来年度新規開講されるリトミックの授業を履修したいとの希望者も多く、今後の発展が楽しみです。



ワークショップ

第1回 宮川博喜氏「舞台照明の基本と可能性」

12月2日(金)、兵庫県立芸術文化センター照明専門員の宮川博喜氏をお招きして、舞台照明のお話と機材操作の指導を頂きました(講堂)。 本学では「子どものためのコンサート」などを開催していますが、毎回、学生や卒業生が裏方を担当します。照明については素人で専門の知識がないため、今回は専門員のお話を伺える最初の貴重な機会となりました。

ワークショップ前半は、機材の理解、セロファンの使い方、スポットの照準を合わせるための工夫など。具体的な知識に加えて機材操作の際の安全確保についてもご教示頂きました。

後半は12月10日の「子どものためのクリスマス・コンサート」に向けて、照明プランをもとに実演指導。観客に見えやすいように照らすだけでなく、角度を調整して演奏者の手元を明るく照らすなどの工夫も施されました。照明ひとつで舞台の雰囲気が大きく変わるのを目の当たりにし、光の大切さを改めて感じました。

今後はこの経験をもとに、よりよい舞台作りをめざしたいと思います。



第2回 北村正治氏「スクエア・ピアノの構造と音楽」

12月16日(金)、北村正治氏(松尾楽器商会ピアノ技術部調律師)をお招きしてスクエア・ピアノについてお話を伺いました(図書館本館ロビー)。

スクエア・ピアノは別名テーブル・ピアノともいい、19世紀中頃にアップライト・ピアノが開発されるまで盛んに使われていました。楽器の構造はもちろん、ピアノの変遷史や、このピアノが使われていた当時のアメリカ音楽の様子など、様々なお話を頂きました。

履修生の実演や楽器の内部構造の公開もあり、普段なかなか体験できない音や光景に参加者は興味津々。参加学生からは「楽器に親しみが湧いた。自分が弾いて感じるスクエア・ピアノの違和感や、音と鍵盤のタッチの違いも、理由を知ると面白さとして捉えることができた」「鍵盤を連打するのがむずかしい理由が分かった。内部まで見て構造がよく分かった」などの感想が聞かれました。



第3回 マイケル・スペンサー氏、原田クマ氏
「クリエイティブ・コミュニケーション・ワークショップ」

2月8日(水)、ヴァイオリン奏者でファシリテーターのマイケル・スペンサー氏、ベース奏者でファシリテーターの原田クマ氏をお迎えして、雲雀丘学園小学校(岩崎優校長)の多目的室および体育館でワークショップを行いました。
これは、学生が音楽専門教育のなかで身に付けた力をファシリテーター(子どもたちの活動をうまく誘導する人)として発揮することで、自分の音楽的な力をどのように生かすことができるかを体験的に学び取るためのワークショップでした。

まず始めに学生のための導入ワークショップが行われ、イギリスでのアウトリーチ事情、クリエイティブ・コミュニケーションについて話を聞いた後、実際に体を動かすことで学びました。次に、雲雀丘学園小学校の五年生とのワークショップを実際に体験し、最後に今回のワークショップについて、講師お二人と小学校の音楽教諭をまじえてのディスカッションを行いました。

始めの導入ワークショップでは、スペンサー氏が突然アフリカの歌を歌い出し、そのメロディーを参加者全員が耳で覚えて歌いました。聴き慣れないリズムと旋律だったので、日頃楽譜から音楽を読み取る習慣の学生たちにはむずかしく、覚えるのに少し時間がかかりました。歌を覚えたところで、振りを習い、輪になって踊りました。その後、八人ずつのグループに分かれ、グループ毎にこの歌に新しい踊りを考えるという課題が出されました。思ってもみない課題に戸惑いながらも、アイディアを出し合って踊りを作り、それぞれ発表して、論評しあいました。次に、「音楽によるアウトリーチ」のイメージを体で表現(ストップ・モーション)せよという課題が出され、三つのグループがそれぞれのコンセプトで群像を作って発表しました。自由に創造して表現することの楽しさが分かってきて、みな目が輝き出し、表情が生き生きとしてきました。


小学生とのワークショップでは、スペンサー氏のヴァイオリン演奏で子どもたちを引き込んだ後、「きつねとうさぎ」の追い駆けっこゲームをしました(このゲームによって子どもたちの性格や人間関係を読み取ることができると教わりました)。続いて、歌を歌いながら体を動かすゲームを全員でしました。次に大学生と小学生が混合で八つのグループに分かれ、@小学生は大学生にインタビューして後でみんなに紹介すること、Aトーンチャイム等を使って自由にファンファーレを作ること、この二つが課題として出されました。ここで学生たちは、子どもたちのアイディアを上手に引き出して、グループとしてまとまった作品に仕上がるよう助力するという役割を担いましたが、日頃小学生と接する機会も少ないため、勝手が分からず苦労したようです。終わりに小学生がグループ毎に大学生を紹介し、ファンファーレを発表しました。

最後のディスカッションでは今日のワークショップに対する戸惑いや驚き、発見や疑問などが率直に出され、理解を深める時間となりました。参加学生からは「慣れていないことの連続で、挑戦することも多かったが、とてもよい経験になった」「音楽とは楽譜を読むことから生まれるのではなく、体で感じること、イメージを持つことによって生まれてくるものなのだろうと思った」「始めの方では体を使って表現することはすごく苦手だと感じたが、みなで動いているうちに自分で驚くほど、楽しさや喜びが自然に出てきて、音楽が楽しいのだという感情が単純な体の動きでわきあがったことに驚いた」といった声が寄せられました。

このワークショップにご協力いただいた雲雀丘学園の教職員のみなさま、とりわけ雲雀丘学園小学校音楽教諭の山本雅子先生、岡村圭一郎先生に心から御礼申し上げます。