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アート・パフォーマンス 芦屋市立美術博物館を見学!

2016年05月31日(火)

 「アート・パフォーマンス」(担当:上念省三講師)では、5月14日(土)午後、芦屋市立美術博物館を訪ね、開催中のコレクション展「具体美術協会/1950年代」を鑑賞しました。
 具体美術協会は、1950年代~70年代に芦屋を中心とした阪神間で活動した前衛美術グループです。既成概念にとらわれない大胆なパフォーマンス、野外展示、舞台活動、自由な平面作品で、当時大きな話題となり、フランスを中心とした海外でも高く評価されました。近年も、海外で大規模な回顧展が開催されたり、作品がオークションで高額で落札されるなど、世界の現代美術の重要な潮流として位置づけられています。
 難解と言われる現代美術の中でも、ひときわ取っ付きにくいと思われる「具体」作品を、どのように味わい、楽しむことができるか、7名の参加者は、まず各自自由に、自分の力でじっくり作品に向き合い、好き・嫌い、面白い、これどうなってるの?といった率直な感想や疑問を持つことから始めました。
 続いて、同館学芸員・國井綾さんにたっぷり1時間、丁寧な作品解説をしていただきました。一つひとつの作品について、一見しただけではわかりにくい素材や技法、作家や主宰者・吉原治良氏(当時、吉原製油㈱社長)の考え方やエピソード、評価の高まりとマーケットが与えた影響、発表当時の様子、展示に当たっての裏話など、興味深く臨場感あふれるお話に、「具体」という現代美術がとても身近に感じられました。
 特に、2013年にグッゲンハイム美術館で開催された回顧展のタイトルがGutai: Splendid Playground(具体:華麗なる遊び場)だったことにふれ、本展の担当学芸員として、特に初期「具体」の奔放で「なんでもあり」の世界を楽しく受け取ってもらえるように構成した、というお話が印象に残っています。
 明るく楽しく、しかも深い専門的な知識に基づいて、作品に対する愛情を持ってお話しくださる國井さんの姿から、美術の専門家として市民に作品の魅力を送り届けるという仕事の面白さを教わったように思います。
 一方で、今回は学芸員の方からこのようなお話をたっぷりとお聞きできたから作品の魅力を十分受け取れたものの、それがなかったら、こんなに楽しめただろうか、と心配になった学生もいたようです。作品のそばに長文の解説を貼るわけにもいかないし、図録や解説書を全員が購入・精読するわけでもないし、虚心に作品に向き合うということも必要だし......と、作品とその背景となる知識の関係、作品の鑑賞・享受のしかたについて、深く考える機会ともなりました。
 
 解説をいただいた後、また各自自由に作品を鑑賞し、敷地内の小出楢重アトリエを観覧し、上念講師の引率で芦屋市街の美術・文化散歩のような感じで駅まで戻ることにしました。
 まず、芦屋市保健福祉センターと隣接する木口記念会館について、㈱ワールドの創業者が私財を寄付して設立されたものであること、メセナ(企業による社会貢献)、民間による公的事業への寄付について、簡単に説明しました。ちょうどそこから見えた、1979年に建てられた芦屋浜シーサイドタウンについても解説。
 芦屋川畔へ出て、美術館で見た元永定正氏の「作品 水」などが発表された1956年に「野外具体美術展」の会場となっていた芦屋公園を歩き、往時の風景を想像しました。阪神芦屋駅北側の芦屋警察署(1927年、兵庫県営繕課・置塩章設計。ファサードを保存)、芦屋カトリック教会(1953年、長谷部鋭吉設計)、芦屋仏教会館(1927年、片岡安設計。初代丸紅社長が寄贈)と名建築を訪ね、お開きとしました。
 
 前衛的な芸術運動の優れた作品を鑑賞し、学芸員という仕事の魅力を知り、芸術を生み育てた芦屋という街の豊かさ、文化の厚みを味わう、有意義な時間となったように思います。
 最後になりましたが、改めて、芦屋市立美術博物館の國井さんをはじめ、関係者の皆さんにお礼申し上げます。