音楽学科

「音楽で生きていく」という決意

- 悩みを乗り越えた2つのきっかけ -

カワイ音楽教室勤務 大石さん

ピアノ講師として教鞭をとりながら、演奏活動も続けている大石さん。明るい笑顔が印象的な方ですが、音楽の道は厳しく、大学時代にも諦めようとしたことが何度もあったそうです。その壁をどのようにして乗り越えたのか、4年間を振り返ってもらいました。

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少人数教育だからこそ、たくさんの挑戦ができた

高校時代に師事していたピアノの先生が、神戸女学院大学の卒業生でした。先生に「あなたにも向いた大学だと思う」と言っていただき、入学を考えるように。夏期講習やオープンキャンパスに参加し、美しい校舎を目にしたことで、「ここで学びたい」という気持ちが固まりました。
実際に入ってみて気づいたのは、少人数制教育のすばらしさです。先生がいつも見守っていてくださるあたたかい雰囲気のなかで、さまざまなことに挑戦できました。大人数の大学だったら、みんなに埋もれてしまって消極的な4年間を送っていたかもしれません。ピアノの先生が私に向いているとおっしゃったのは、こういうところだったのだと思います。ピアノ以外の楽器を学んでいる学生と交流する機会も多く、たくさんの友達ができました。
ピアノは基本的にひとりで弾くものなので、孤独を感じることもあります。でも神戸女学院大学では先生との距離も友達との距離も近く、心の支えになりました。

挫折しそうな自分を変えた、海外ボランティア

ただ学生時代は楽しいばかりではなく、悩みの多い時期でもありました。とくに3年生になって就職活動を意識するようになってからは「このまま音楽を続けていっていいのか」と迷い、諦めようとしたことも何度もあります。
そんな私が変えてくれたきっかけのひとつが、大学3年生のときに参加したカンボジアへの音楽ボランティア。学外のプログラムなのですが、正門前で配っていたチラシを見てすぐに「これだ!」と感じ、思い切って参加しました。
滞在期間は約1週間。そのうちの3日間は現地の子どもたちとずっと一緒に過ごし、遊んだり音楽を教えたりしました。そこで実感したのは、言葉が通じなくても音楽さえあれが心を通わせられるということ。純粋な心で音楽を楽しみ、キラキラした目を向けてくれる彼らと一緒に過ごすことで、音楽のすばらしさと、その音楽を学べている幸せを改めて感じました。

音楽を通して「伝える」ことが使命

悩んでばかりだった私を変えてくれた機会が、もうひとつあります。それは「音楽によるアウトリーチ」という授業を受けたこと。企画の立て方やプログラム構成などについての講義を受けたあと、実習として小学校や幼稚園、医療施設など、さまざまな場所で演奏しました。4年生の後期には、ほぼ毎月のようにミニコンサートを実施。施設に合わせて曲目もMCも変えていたのでとても忙しかったのですが、非常に楽しく、一緒に演奏していたメンバーから多くの刺激を受けました。
ホールではない場所で演奏すると、お客様との距離が近いので表情がとてもよく見えます。そのため自分は演奏を通して何を伝えたいのか、お客様にどんなことを感じてほしいのかということを、より深く考えるようになりました。
そうした経験を重ねることで、音楽を通して気持ちを伝えることこそが自分の使命なのだと実感。ずっとピアノを続けてきたことは間違っていなかったと思い、卒業後も音楽で生きていこうという決心がつきました。
音楽学科では、ピアノは弾けて当たり前。その先にある音楽との向き合い方や伝え方、そして「楽しむ」ことの大切さを、アウトリーチ活動を通じて学べたと思います。

私はまだ、私らしさを知らない

今は演奏者として活動するだけでなく、小さな子どもから年配の方まで、幅広い年齢の方にピアノを教える指導者としての立場になりました。生徒さんのことをできる限り理解しようと努めていますが、個人レッスンは1回30分間。その短い時間で相手の考えていることを知るのは至難の技です。
最近は、相手のことを知る前にまず自分のことを知ってもらうことが大切ではないかと思うようになりました。自分自身のことをよく理解し、さまざまな形で伝えていけば、どこかで通じ合える部分が見つかるのではないかと考えています。
これからも私らしさ・生徒さんらしさを少しずつ知っていきながら、音楽による人と人とのつながりを大切に育んでいきたいです。

Profile

音楽学科
大石さん カワイ音楽教室勤務

2011年3月、奈良県立高円高等学校音楽科卒業。2015年3月、神戸女学院大学音楽学部器楽専攻卒業。現在はピアノ講師として勤務しながら、ソロ、伴奏、アンサンブルなど、多岐にわたる演奏活動を継続。在学中に出会った2台ピアノの演奏も続けており、奈良市音楽協会主催の定期演奏会で発表している。また、奈良市民合唱団で伴奏補助も務めている。