音楽学科

音楽の楽しさを子どもたちに伝える

- 10年後・20年後につながる授業 -

神戸市立小学校 教諭 音楽専科 奥田さん

在学中は音楽学科 器楽専攻(ピアノ)で学んでいた奥田さん。中学・高校の音楽の教員免許を取得されましたが、採用地域である神戸市の方針により、現在は小学校で音楽を教えています。
仕事のやりがいや学生時代の思い出を振り返ってもらいました。

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授業に役立つ、大学で身につけたスキル

音楽専科の教員として、主に小学校3年生から6年生の音楽の授業を担当しています。もともと中学校の先生になるつもりだったので最初は何もわからず、とにかく毎日に必死でしたが、2年目になってからは受け持っている子どもたちに力がついてきていると気づくようになりました。苦手だったリコーダーを上手に吹けるようになっていたり、曲の感想をしっかり文章にできるようになったりと、子どもたちの成長の速さに日々驚かされます。
子どもたちに配る合奏の楽譜は自分で作るので、学生時代に「コンピュータ作譜法」という授業で音楽編集ソフトの使い方をマスターしていたことが役立ちました。また、声楽の伴奏やピアノ二重奏・ピアノトリオで人に合わせて弾くコツを学んだことも、今の授業に生かされています。

ひとつひとつの音を深く理解した和声の授業

音楽学科での学びでとくに印象にのこっているのは、4年間受講していた和声の授業です。和音の仕組みを理論立てて学び、作曲をしたりベートーベンやバッハの曲を分析したりしました。「なぜここでこの和音を使っているのか」という作曲家の意図を理解できるようになったことで、演奏にも変化が生まれたと思います。
3年生のときには病気で右手が使えなくなり、しばらく左手だけで弾くことになりました。両手であれば10音出せますが、片手だと5音。選りすぐりの音だけになるので、どの音が主旋律なのか、どの音が次につながるのか、ひとつひとつの意味や役割を考えながら弾くことが重要になります。そのときにも、和声の知識が大きく役立ちました。

苦難を乗り越えたソロリサイタルの思い出

授業以外では先生の勧めでイタリアのペルージャ音楽祭に参加し、演奏者として舞台に上がるほか、さまざまな国の演奏家からピアノのレッスンを受けるという貴重な機会を得ました。同期とコンサートを企画したり、大阪交響楽団の方や消防団の音楽隊と共演したことも。多くの演奏経験を積みましたが、そのなかでも心に残っているのは4年生のときのソロリサイタルです。「左手のピアノ」と題し、ひとりで35分間のプログラムを組んで演奏しました。左手だけで弾ける曲を中心に選び、何曲かは両手の曲にも挑戦。ずっと応援してくれていた家族や友人たちをこのリサイタルに招待して演奏を聞いてもらいました。ひとつの苦難を乗り越えた、大切な思い出です。

私はまだ、教育の極みを知らない。

小学校で教えるようになって4年目ですが、授業には改善の余地が多くあります。「次の授業ではもっとゆっくり話そう」「次はワークシートの字を大きくして見やすくしよう」など、毎日のように反省してブラッシュアップ。次の授業や来年度に同じ単元を扱うとき、もっといいものにしていけるように日々積み上げています。それでもまだまだ、ベテランの先生にはかなわないことばかりです。
子どもたちのいいところを伸ばしていくにはどうすればいいか、試行錯誤に際限はありません。音楽が好き・楽しいという思いをもってもらい、10年後・20年後にも音楽に親しんでもらえるきっかけをつくることができるように、これからも努力を続けていきます。

Profile

音楽学科
奥田さん 神戸市立小学校 教諭 音楽専科

2014年3月、兵庫県立長田高等学校卒業。同年4月、神戸女学院大学 音楽学部 音楽学科 器楽専攻に入学、2019年3月卒業。学生時代はピアノ演奏者としての腕を磨く一方、環境・バイオサイエンス学科などの授業も受講して視野を広げた。神戸市の教員採用試験に合格し、2019年4月から小学校の音楽専科として勤務。日々子どもたちの成長を見守っている。